talk_32050101
ショウドウジ:拙者は……鈴木正道寺高校3年生、メカ技巧部部長並びに、風紀委員長……
ショウドウジ:左様、学園の不義を正し正義を布くが我が使命……
ショウドウジ:先祖伝来の重宝モラルアーマーに身を包み、天下の不義を滅すべし
ショウドウジ:拙者は鈴木正道寺鈴木正道寺であああある!
???:正道寺、しっかりしろ
ショウドウジ:何をするか、オメガ殿!痛いではないかああああ!
オメガ:正道寺、生存確認バイタル異常なし
オメガ:やった、蘇生成功オメガ、とっても偉い
ショウドウジ:どこぞの世界に斯様な蘇生術がありましょうぞ!
ショウドウジ:オメガ殿、気をつけてくだされ拙者でなければ死人が出ておりますぞ
オメガ:不満の多いやつだ
ショウドウジ:しかし参りましたなぁ遭難して真っ先に無力化されるのは――
ショウドウジ:電力稼働の武具を持つ拙者達ですぞ
オメガ:正道寺、オマエと一緒にするなオメガの技術力は世界一だ
ショウドウジ:ぬぅ、どういう意味だ
オメガ:オメガの体内機関最新電力供給システム稼働中
オメガ:小型原子炉相当のリアクター理論上、半永久的に止まらない
ショウドウジ:ぬぅぅぅぅ……オメガ殿のくせに生意気なッ!
オメガ:それにお前、モラルアーマー地球に置いてきた
オメガ:お前、モラル無いサイボーグ部分、少し電力も少なくていい
ショウドウジ:ですから、モラルアーマーを再び作った折には互いにエネルギーを供給すべく──
ショウドウジ:そこを何とかああああッ!
オメガ:絶対無理
ショウドウジ:ぬおおおお、オメガ殿おおおおッ!
オメガ:オメガ、断固拒絶
ショウドウジ:ぐああああああああッ!
ショウドウジ:ぐぬぬぬぬ、オメガ殿などもう頼らないのであああある!
オメガ:…………
chattalk_32050102
タヌヒコ:2人とも、お疲れぃ
タヌヒコ:[item:202102031(デンチの実)]は手に入ったか
ショウドウジ:ふはははは、余裕であああある
ショウドウジ:たかが木の実の採取など赤児の手をひねるが如きものよ
オメガ:正道寺、ウソよくない
オメガ:高精度レーダーで見つけたのオメガ
オメガ:全部オメガ見つけた
オメガ:収穫も全部オメガ頑張った
ショウドウジ:オメガ殿、手柄を横取りとは不届き千万ですぞおおおお!
タヌヒコ:あのなぁ……
タヌヒコ:わかったから2人とも落ち着いてくれよ!
ショウドウジ:暫し待たれよ拙者が可及的速やかに参上仕るうッ!
オメガ:違う、オメガが先に行く正道寺は後から来い
ショウドウジ:ぬああああッ、ずるいですぞおおおお先駆けはずるいですぞおおおお!
talk_32050103
ショウドウジ:ふう、これで当面の電力供給における心配はなくなったであるな
オメガ:正道寺、旧式これくらいでいい
ショウドウジ:拙者は旧式ではなあいッ!
ショウドウジ:確かに、先祖伝来の重宝である若干の古さがあるのは否めぬ
ショウドウジ:だが、それはただの古さにあらず一族の悲願を繋げた意志の地層
ショウドウジ:拙者はそれを何よりの誇りに思う故に、古きを以て新しきを破る無尽蔵の力とならん
オメガ:……理解不能
ショウドウジ:ぐぬぬぬぬ、所詮、性能を追求するコンセプトで設計されたオメガ殿にはわからぬことであったか……
オメガ:でも、物を大切にするすごく、すごく、いいこと
オメガ:オメガ、正道寺えらいと思った
ショウドウジ:オメガ殿……
ショウドウジ:うううむ、やや意味合いは異なるが悪い気はせんであるな……
オメガ:でも、正道寺には負けないオメガは世界一のロボットだから
ショウドウジ:拙者もこの世界でモラルアーマーを復元しても良いかもしれませんなぁあ!
talk_32050201
-:名門武家の嫡流、鈴木正道寺にはとある大きな悩みがあった。
-:それは武家にとってあるまじきこと、大きな恥であったため、彼はいつも気に病んでいた。
-:その悩みとは、いったい──
ショウドウジ:ぬぅぅぅぅ、随分と騒がしき声が聞こえてきますなぁ
トミ:あんたって人は見下げた男だねぇ今度という今度は容赦しないよっ!
ヨヘイ:ひええええっ勘弁しておくれよ、もうしないからぁ
ショウドウジ:なっ、これは大変ですぞおおおお!戦であああある! 出合え出合え!
トミ:ちょいと、人聞きが悪いわねぇ!誰が戦よ、戦なんてやってないわよ!
ショウドウジ:なんと……違うのであるか?
ヨヘイ:へへへ、旦那ぁ、違うも何もこいつぁ犬も食わねぇ夫婦喧嘩でさぁ
ショウドウジ:なっ、夫婦喧嘩ですと!?そいつはいけませんぞおおおお仲良くせねばなりませんぞおおおお!
トミ:それができないからああああ喧嘩してんでしょうがああああ!
ショウドウジ:なっ、ななな、何という威圧感……女人のそれとはとても思えぬこれはもはや、一端の大豪傑──
トミ:ちょっとあんたぁぁぁぁ!どこの淑女に向かって大豪傑だってぇぇぇぇ?
ヨヘイ:ちょいと待ったああああ!旦那ぁ、いいからこっちへほら、早く! 早くっ!
トミ:ちょいと待ちなさい!まだ話は済んでないわよ!
ショウドウジ:何故逃げるのですか!男なら正々堂々と──
ヨヘイ:だからそれがダメなんでさぁ
ショウドウジ:え……駄目ですと?
ヨヘイ:あいつは薬缶みてぇな女でしてねぇ1度カンカンになっちまったらとことんやんなきゃ気がすまねぇんだ
ヨヘイ:だから、あのまま戦って発散させてやんなきゃダメなんですよ
ショウドウジ:むう、そういう戦いもあるのだな
ヨヘイ:でね、ガイアスの旦那1つ頼まれちゃくれねぇですかい?
ショウドウジ:おうよ、助太刀ですなああああっ!腕が鳴りますなああああっ!
ヨヘイ:だからさっき説明したでしょうが!火に油を注いでどうすんですかい!
ヨヘイ:あんたが出て来ちまったらあいつはもっとカンカンになるに決まってんでしょうが!
ショウドウジ:では、拙者は何をすればよいので
ヨヘイ:みかんを採ってきてくれねぇですか
ショウドウジ:承知ぃッ! 承知承知承知ぃぃぃぃ!
ショウドウジ:……しかし、何故みかんなどを?
chattalk_32050202
タヌヒコ:お疲れぃ、正道寺
ショウドウジ:おお、たぬ彦殿ではありませぬか
タヌヒコ:美味しいみかんを見つけたって
タヌヒコ:聞いているけど本当か?
ショウドウジ:おうよ、鈴なりでありましたぞ!
タヌヒコ:じゃあ、待ってるぜ!よろしくな!
ショウドウジ:万難を排して馳せ参じますぞおおおお
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トミ:あんたぁぁぁぁ、いくよぅぅぅぅ!
ヨヘイ:おうよ、かかって来やがれぇ!
ショウドウジ:ぬぅ、しかし不義を目の前にして何もできぬというのは辛いものである
ヨヘイ:ぐああああ、やられたああああ……
ショウドウジ:ハッ、これはまずいですぞ!?与平殿の旗色が悪くなって来ましたぞ
ショウドウジ:ぐぬぬ、手出し無用と言われた手前何もできませぬが、これ以上は見て見ぬ振りなど……
ショウドウジ:もっとできませぬぞおおおおおおお!
トミ:きええええええええええええいっ!
-:この時、鈴木正道寺の大きな悩みの正体が、ついに発動してしまう。
-:それは彼が助太刀をすると必ずその陣営が敗北してしまうという不幸にして不名誉な体質であった
-:理由はわかっていないただ、鈴木家がつくと必ず戦に負けてしまうため一門は酷く嫌われていた
ショウドウジ:相済まぬぅぅぅぅつい助太刀をしてしまったああああ
ショウドウジ:拙者のせいで、与平殿は負けてしまって誠に申し訳もなく──
ヨヘイ:何で旦那が敗因になっちまうのか皆目見当もつかねえけど……
ヨヘイ:それが本当に旦那のせいだってんなら心より感謝をしなきゃなんねぇですな
ショウドウジ:え、拙者のせいで負けたのに感謝ですと?
ヨヘイ:あいつぁ、ああなっちまうと引くに引けねえんでぃ俺の方が折れんのがいいんでさぁ
ヨヘイ:無理に意地張って女房に勝つよりこうやって適度に発散させて負ける方が、万倍マシってもんでさぁ
ショウドウジ:うーむ、そういうものですか……夫婦の間柄というものはなかなかに奥が深いですなぁ
ヨヘイ:そんなことよりほら、旦那ぁ頼んでいたみかんをくださいませんか
ショウドウジ:おお、そうであった!どうぞお納めくだされ
ヨヘイ:へへへ、これこれあいつはみかんに目がなくてね
ヨヘイ:喧嘩の後は、いつもこれで仲直りさ
-:そう言って、与平はみかんを片手にとみの元へと笑顔で駆け寄る。
-:最初はむすっとしていたとみもそれを見るや笑顔になって、仲睦まじい夫婦に戻るのだった。
ショウドウジ:負けるが、勝ちであるか……武家の拙者には縁遠いものであるが
ショウドウジ:こうして2人を見ていると悪くはないものであるな……
-:正道寺はそれを遠巻きに見ながら何度も深くうなずくのであった。
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-:矛盾という言葉は中国の故事で、「韓非子」という書にある有名なエピソードに由来する。
-:何でも貫く最強の矛と何でも防ぐ最強の盾。2つがぶつかったらどうなるか。
-:ここに、その究極の矛盾を立証しようとする勇気ある2人が存在した。
-:矛の名を鈴木正道寺、盾の名を時風オメガと言った──。
ショウドウジ:攻撃は最大の防御であああある!
ショウドウジ:常に先手をとり、最大出力で突貫するそれこそ百戦百勝の必勝戦術ですぞ
オメガ:正道寺、不正解防御なくして攻撃なしだ
オメガ:敢えて先手を取らせ、全ての攻撃を受けきって消耗したところを叩く
オメガ:敵性勢力を徹底的に駆逐する殲滅戦それこそ完全勝利
ショウドウジ:否、最強の矛こそ最強ですぞ!
オメガ:正道寺、最強の矛違うむしろ最弱お前が戦うと勝てない
オメガ:そんなヤツの言うこと誰も信じない
ショウドウジ:ぐぬぬぬぬ、言わせておけばオメガ殿こそ大嘘吐きであろうッ!
ショウドウジ:いつも困ればチュドーンチュドーンオメガ殿が防御に徹するところなど見たことがないわああああ!
オメガ:うるさいうるさいうるさい!
ショウドウジ:痛ぁあああああいっ!痛いでござる!!
ショウドウジ:ほらほらほら、オメガ殿おおおお!これですぞ、これですぞおおおお!
オメガ:好きな季節は、冬
ショウドウジ:夏であああある!
ショウドウジ:好物は魚だ!
オメガ:オメガ、お菓子が好き
オメガ:遊びに行くなら海がいい
ショウドウジ:そこは山であろうが!修行と言えば山ああああ!
ショウドウジ:朝が好きだああああ!
オメガ:夜の方がいい
ショウドウジ:太陽が好きだああああ!
オメガ:月の方がかわいい
ショウドウジ:ぐぬぬぬ、何故だ何故、拙者達はこうも合わぬものか
オメガ:正道寺とオメガ、対極の存在水と油、相容れない
ショウドウジ:ふははは、それはどうであろうな一概にそうとも言い切れぬですぞ
オメガ:ん? どういうことだ
ショウドウジ:矛盾、大いに結構!相反するからこそ高め合う対極の先を目指すのですぞ!
ショウドウジ:我々は矛と盾であるからこそ常に最強を目指せるのやも知れませんぞ
オメガ:……やはり、正道寺は理解不能だ
オメガ:でも、何だこれは……オメガの中に熱いものが……
-:矛盾やパラドクスを嫌う合理の結晶。時風オメガに正道寺の出した曖昧な解答を受け容れる余地はない。
-:しかし、それでも何か感じるものでもあるのだろうか。オメガは必死に何かを演算するのだった──。
talk_32050401
-:ある日、鈴木正道寺はラクーンの村落で子ども達の相手を任されていた。
-:かくれんぼ、鬼ごっこ、じゃんけんあみだくじ、しりとり、かごめかごめ影踏み、相撲、缶けり、靴飛ばし──。
-:彼はありとあらゆる遊びを提案し子ども達と勝負するのであったが、どれ1つとして勝てなかった。
-:無論、それが彼の一族に伝わる不勝の宿命によるところであるのは言うまでもない。
ルリ:うわぁ、こんな弱いお兄ちゃんあたし生まれて初めて見た!
ハリ:本当だね、子どもに負けちゃうお兄ちゃんなんて格好悪いよね
タマ:ぷぅー、くすくすくす……
ショウドウジ:ぐぬぬぬぬ、小童どもめぇ!武士を愚弄するかああああっ!
ルリ:うわー、正道寺が怒ったー逃げろ、負け癖がうつるぞー
ショウドウジ:待てい! 待て、待て、待てぇい!
ショウドウジ:そうら、召し捕ったりぃぃぃぃ!
タマ:やーん、正道寺に捕まったぁー
ハリ:たまちゃんが捕まったぞ!みんな、助けろー! 突撃ー!
ショウドウジ:ぐぬぬ、集団戦法とは卑怯ですぞ!武士ならば正々堂々一騎打ちで──
ルリ:わああああああああー!
ハリ:わああああああああー!
タマ:わああああああああー!
ショウドウジ:ふはははは! 参った参った!拙者、降参であああある!
-:──と、この調子なので当然、正道寺に勝ち目など端からなく宿命以前の話なのであった。
-:しばらく遊んでいてふと、正道寺は気づいた
ショウドウジ:ぬ? たま殿の姿が見当たらぬが厠であろうか?
ハリ:ううん、見てないよ
ルリ:あ、そう言えば、あっちの方に歩いてったのを見た気がする
ショウドウジ:なんですと!?それは何時のことであろうか!
ルリ:えーっとね、2時間くらい前かな
ショウドウジ:一大事であああある!とにかくたま殿がどこに向かったか探し出さねばなりませんぞ!
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ショウドウジ:これでたま殿の靴が揃った……むぅ、この付近に気配は……
タマ:うわああああああああん……
ショウドウジ:むっ、この声は……!
-:正道寺が声のする方の茂みに分け入ると、そこにはたまの姿があった。
ショウドウジ:おお! 無事であったか!良かった良かった!
タマ:うわあああああん……お兄ちゃん、ごめんなざあああい
タマ:ううぅ、珍しい喋々が飛んでてお兄ちゃんに見せたくて追ってったら……うぇえええん
ショウドウジ:そうでござったか……さあ、姉君達の元へ帰ろうぞ!
タマ:うん……!
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タマ:うわああああああああん……お兄ちゃん、ごめんなざああああい
ショウドウジ:もうよい、泣くでない大事なくて良かったではないか
ルリ:そうだよ、弱いお兄ちゃんの言う通りだよ
ハリ:ほら、たま、泣きやんで弱いお兄ちゃんにお礼言おう
タマ:うぇ、ひっぐ……うん、うぇ……弱いお兄ちゃん……ごめんなざぃ……
ショウドウジ:ふはははは、気にするでないわ!
ショウドウジ:だが、その弱いお兄ちゃんは止めて欲しいですかな?
ルリ:うん、わかった!弱いお兄ちゃんありがとう!
ハリ:弱いお兄ちゃんありがとう!
タマ:弱いお兄ちゃんありがとう!
ショウドウジ:その弱いお兄ちゃんを止めろと言っておるであろおおおお!
-:子ども達の笑い声が響き渡る。そんな柔らかな時間の中で正道寺は苦笑する。
ショウドウジ:これが世に言う泣く子と地頭にはかなわぬというやつであるか
ショウドウジ:ふはははは、こういう敗北ならば悪くはないのかも知れんな……
talk_32050501
-:鈴木正道寺は、とある村に滞在中剣術道場に身を寄せていた。
-:一宿一飯の恩義という訳でもないが、彼は得意の剣術を子ども達に教えるよう師範から請われる。
-:無論、正道寺は二つ返事でこれを受けるのであったが、それには少し問題もあった──。
ショウドウジ:違ああああう、こうである!恐れず、もっと踏み込めええええい!
ショウドウジ:ふおおおお……せい、せい、せいやぁ!
ダニエル:ほーーーーせー、せー、せーやー
ショウドウジ:だにえる殿、だにえる殿そうではない、もっと踏み込むのだ
ダニエル:先生、無駄だよ僕はとびきり弱いんだ
ダニエル:今まで1度だって勝ったことがないこんな練習なんてしても、どうせ……
-:正道寺は優しく首を振ってこう告げる。
ショウドウジ:雑巾がけから始めてみますか
ダニエル:え、何で雑巾がけ?
ダニエル:何で雑巾がけなんかやんなきゃいけないんだよ!
ダニエル:これなら練習の方がマシだよ!
ショウドウジ:だにえる殿、こうだ洗剤かける、洗剤拭き取る
ショウドウジ:ほら、これを繰り返しやってみるのである
ダニエル:えー、こう?洗剤かける、洗剤拭き取る
ショウドウジ:そうだ、それでいいもう1回
ダニエル:洗剤かける、洗剤拭き取る洗剤かける、洗剤拭き取る
ショウドウジ:もう1回
ダニエル:洗剤かける、洗剤拭き──
ダニエル:って先生!こんなの何の意味があるんだよ!
ダニエル:僕は勝たなきゃならないんだ!次の大会で勝たないと道場を辞めさせられちゃうんだよ!
ショウドウジ:大丈夫だ、貴様は勝てる拙者を信じて続けるのである
-:こうして、練習などしないままついに試合の本番当日がやって来てしまうのであった。
ダニエル:先生、雑巾がけばかりで全然練習してないんですけど本当に勝てるんですか?
ショウドウジ:心配ご無用、拙者を信じよ
ダニエル:あーあ、普通に練習しとけば良かったのに……
ショウドウジ:何を言うか、練習など意味がないそう言ったのは貴様であろうが
ダニエル:それは、そうだけど……
ショウドウジ:さあ、そろそろ試合が始まる後は頼みましたぞ、オメガ殿
オメガ:よし、任せろオメガ、監督する
ダニエル:えっ、ちょ、先生何で!?
ショウドウジ:拙者は去るこれぞ唯一無二の必勝法である
-:そう言って、笑顔でだにえるを送り出すと、正道寺は静かに席を立った。
-:そして、ぐるりと大きく試合場を回り敵陣の指導者の方に辿り着くと、一礼してどかりとそこに座った。
ダニエル:ええっ!? 先生、何で敵陣に!?そんなのあり得ないでしょ!
-:しかし、これが不思議なことにいざ試合が始まってみるとだにえるは圧勝なのである。
-:だにえるは、試合が終わるや慌てて正道寺の元へ駆け寄った。
ダニエル:先生、どうなってるんですか!!何で僕は勝っちゃったんですか?
ダニエル:あっ、そうか!あの雑巾がけが秘伝の脚捌きを──
ショウドウジ:いや、あれに全く意味はない
ダニエル:ええええっ!?
ショウドウジ:ただの師範のお手伝いである拙者独りでやるのは面倒であったので貴様に手伝ってもらったのだ
ダニエル:それじゃ、どうして……
ショウドウジ:それは……
-:だが、そう言いかけて口をつぐむそして彼は何も言わずに背を向けた。
ダニエル:先生、先生待ってよ!
オメガ:だにえる、正道寺はわかっているのだ自分がいるとお前が勝てないだから去るのだ
ダニエル:意味わかんないよ! 先生!
-:まさか自分がついた方が敗北するという理不尽な宿命のせいだとは言えるはずもない。
-:正道寺はただ沈黙する他ない。何もできず、静かに去っていく──。