talk_32020101
レン:俺の名は……夏目蓮
レン:18歳の……数学教師だ
レン:飛び級で大学へ進学した後若くして数学の賞を総なめにし学界でやることがなくなった
レン:ほんの退屈しのぎのつもりだったが教育実習で母校に戻ってみればいきなりこれは笑えるな……
レン:クソッ……俺はこんなところで時間を無駄にするわけには……
???:おやおやお困りのようですね……
???:……えっと……ここが…………この錬成は……術式に……
レン:おい、不動クロム……貴様、何をしている
-:クロムは蓮の周囲に不思議な模様を書きながら、呪術めいた文言を詠唱していた。
クロム:ふふ、気づいちゃいました?初歩の錬金術をね、試してみようかと思いまして
クロム:錬成魔方陣を描いていたんです
レン:何故、俺の周囲にそれを描く30文字以内で簡潔に答えよ
クロム:はい、蓮を金に替えたらこの世界での生活が楽になるかなと思いまして
レン:0点!
-:そう言って蓮は足下の錬成陣を乱暴に踏み消す
クロム:あーあ、せっかくもう少しで完成するところでしたのに……
レン:────ッ!?
クロム:あれあれ?どうかしたんですか?
レン:くっ……貴様、何をした
クロム:ふふ、案外効くのが遅かったですね
レン:ふ、ふざけやがって何が、金の錬成だっ……こいつは、ぐぅっ……
クロム:それを見抜くとは、流石、蓮ですそう、僕が施した術式は魂の強制強化
クロム:感じないですか?蓮の潜在的な力を……
レン:ぐああああああああ……
レン:……何だ、この感覚は……頭の中が、冴え渡っている……
レン:……不思議だ、時間が止まり前後、左右……上下が無い……
レン:頭の中にあるのは、ただ不思議な不可思議な……数式だけ……
レン:……何故だか、俺は知っているこれは……異世界移動における……超異次元方程式の一部……
レン:これが解ければ、元の世界に……!?
レン:────ッ!?
レン:……ば、馬鹿な……一部ではない……続きが……方程式の続きが、溢れて……
クロム:わかりますか……蓮…………この錬成は……
レン:おい、不動クロム……貴様、俺の周りで何をしている
クロム:ふふ、また気づいてしまったんですねそう、今度こそ、金の錬成を……
レン:0点!不動クロム、落第だっ!
クロム:ふふふ、それは参りましたね
レン:フン、貴様の相手をして熱量を無駄に消費するのが惜しい
レン:そんなことより紙とペンを寄越せ
クロム:残念、そんなものはありませんよ
レン:なければその替わりになるものを探しに行けばいいだけのこと
レン:ついて来い、クロム!
クロム:ふふふ、もちろんです
chattalk_32020102
タヌヒコ:2人とも、お疲れぃ
タヌヒコ:[item:202102051(ペーパーリーフ)]を手にいれたらしいなあ
レン:ああ、先ほど採取したところだ
レン:202102051
レン:待っていろ、すぐに持っていってやる
talk_32020103
レン:しかし不思議な葉だ木の棒でなぞると文字が書ける
クロム:ふふ、[item:202102051(ペーパーリーフ)]とはよく言ったものです
レン:うるさい、貴様は少し黙っていろ
-:そう言って、蓮は[item:202102051(ペーパーリーフ)]に先ほど脳内で閃いた数式を次々と書き写していく
レン:……解ける……解けるぞ……
レン:思い違いなどではなかった……やはりこれは、間違いなくいける解まで辿り着ける……!
レン:よし、いいぞ、ここまでは問題ない記憶した通りだ……後は、この続きを解けば──
レン:ああ、この感覚……やはり俺は──
レン:って、おい! クロム!貴様、何をしている!!
クロム:何をって、栄養補給ですよ?うん、なかなか味も悪くないですね食べてみますか?
-:そう言って、クロムは[item:202102051(ペーパーリーフ)]をもしゃもしゃと食べながら、残りを勧めた。
レン:ッ! ……正気か?その葉には、俺が解いた超異次元方程式があったのだぞ!
クロム:ふふ、そうだったんですね?それは惜しかったです
レン:貴様、ふざけるなッ!それがあれば次元を遡って地球へ戻れたのかも知れないのだぞ!
クロム:……本当に、蓮はそれでいいのですか?
レン:? ……いいに決まっているだろう!
クロム:ふーん……キミは僕と同類だと思っていましたが見立て違いだったのですかね
レン:同類、だと……
クロム:地球ではやることがなくなって退屈になってしまった人間のことですよ
レン:────!?
クロム:ふふふ、形はどうであれこんなに面白い世界に来たんですよ?もっと楽しまないと損じゃないですか
レン:……フンッ
レン:当然だこの世界の理など一瞬で俺が解明してやる
-:そう言うと蓮は、残りの[item:202102051(ペーパーリーフ)]を全て破り捨てた。
クロム:ふふふ、そうそれでこそ僕が唯一認める男夏目蓮です
レン:フン、生意気なやつだ
-:悪態をつきつつも、蓮の表情はどこか生き生きとしたものになっていた。
クロム:こんなところで燻られては困りますよ、蓮
クロム:僕をもっと楽しませてくれないと
talk_32020201
-:夏目蓮は、とある訪問先の町で現地ラクーン族の高校の数学教師を依頼された
-:しかし、まるで文化の異なる生徒だ何から教えればいいのか流石の蓮にも迷いがあった──
レン:くっ、教科書を読んでも何もわからんぞ……
レン:一体、何を教えればいいのだ
イッペイ:先生、ガイアスの高校では何をやっているんですか
フミ:文、ガイアスの算術が知りたいです!
レン:そうか、数字は万国共通だったな異世界であっても通用するはず
レン:よし、では……まずは複素数でもやってみるか
イッペイ:ふくそすう? 何ですかそれ
レン:虚数i……いや、-1の平方根で規定され、a+biで表現した式の一種で
フミ:先生、わかりませーん
レン:なっ、そうか……では三角関数はサイン、コサイン、タンジェントで
イッペイ:先生、わかりませーん
レン:では、対数は、微分積分は?ベクトルはどうだ?
フミ:わかりませーん
レン:順列、組み合わせは?確率計算はどうだ?
イッペイ:わかりませーん
レン:ば、馬鹿な……ならば、何なら知っていると言うのだ
フミ:うーん、一平くん、この前はパニーの数え方を勉強したよね
イッペイ:そうそう、200パニーのものを3つ買ったら200+200+200で600パニーあれは難問だったぞ
レン:なっ、足し算だと……そこはかけ算ですらないのか!?
レン:ま、まさかとは思うが、貴様等……九九を知らないとは言わせんぞ!
フミ:くく? なあにそれ?
イッペイ:ほら、あれだよ!いつも外に出る時にはいてるやつ!
レン:それは靴だ!
レン:ククク、上等じゃないか……ならば、この俺が教えてやればいいだけのこと
レン:待っていろ、貴様等ッ!すぐに戻って来るからな!
chattalk_32020202
タヌヒコ:先ほど連絡をもらったが蓮、どうしたんでい?
レン:これを見てくれないか
レン:202102051
タヌヒコ:おお、カードリーフじゃねえか
タヌヒコ:[item:202102051(ペーパーリーフ)]と同じくなぞれば文字が書ける葉っぱだぜい
タヌヒコ:よく似てるがより小さくて薄いのが特徴だな
レン:これを束ねて小さなカード帳にしてもらいたいのだ
タヌヒコ:悪りぃな、そういうのはちょっと
タヌヒコ:おいらの方ではやっていないんだ
タヌヒコ:バロンに相談してみたらどうでい?
レン:なるほど、その手があったか
talk_32020203
-:蓮は戻って来るや、すぐさまバロンに相談して作った品物を生徒達に配った
イッペイ:先生、これ何ですか?
フミ:初めて見るね、わくわくする
レン:これからそれを使って【九九暗記カード】を作ってもらう
イッペイ:くくあんきかーど?
レン:1の段から9の段まで全て書き込み、文字通り暗記していくためのカードだ
フミ:うーん……
レン:フン、まあ習うより慣れろだ俺が言ったようにやってみろ
-:実際に、カードに九九を書き込み生徒達は一心不乱に暗記していく
-:ラクーン生徒は優秀だったようですぐにそれを覚え、自在に九九を使いこなせるようになった
-:ところが、異変はそれだけにとどまらなかった──
イッペイ:文君、質量と速度の関係値はこの場合考慮すべきではないね
フミ:そうかしら、誤差の範囲内だけれど大気や海流の予測では演算上考慮が必要だと私は考えます
イッペイ:蓋し、不可逆的な蓋然性の問題に帰結すべき極めて有意義な特異現象に過ぎないのにかい?
フミ:いえ、そもそも一平氏の誤謬は特殊性と一般性との判別論的錯誤に因るものかと
レン:な……何なんだこれはこいつら、九九を覚えただけで文明レベルが開花している……?
レン:地球の数学を全て教えてみたらこいつらは、一体どこまで達することができるだろうか……
レン:ククク、面白い……生徒が伸びるのは教師冥利に尽きるな
レン:さあ、昇って来るがいい!この俺の、高みまでな!
イッペイ:因って、このオナラの臭いは僕のお尻から出たものではない!Q.E.D!
フミ:ちょっと、何勝手に終わらせてんのよ私のものでもないわよ、バカぁ!
レン:くっ……前言撤回だ!
talk_32020301
クロム:おや、あれはひょっとして……
-:不動クロムが街を散策していると、きょろきょろと周囲を気にしながら歩く不審な影を見つける。
-:いかにも怪しい人影の正体は、夏目蓮だった──。
クロム:ふふ、何やら面白そうな匂いがしてきましたね……
クロム:ちょっと跡をつけてみましょう
レン:くっ、誰もいないだろうなこんなところをあいつらに見られれば何を言われるか……
レン:しかしどこなのだ……このチラシによると、この辺りにあるはずなのだが……
レン:なっ、あの行列は、まさか!?
レン:ククク、間違いないあれこそは俺の探し求める至高の新境地……
レン:新たなる知の地平俺が切り拓かねばなるまい!
-:不退転の決意で表情を固くした夏目蓮は、大いなる人類の一歩を踏み出すのだった。
店員:おまちどおさまでーす当店の1番人気にして最高傑作パンケーキ・グランデになりまーす
レン:おお、待ちわびたぞ!
レン:ククク、何とも冒涜的なフォルムではないか……ほう、随分といきり立ったものだな
レン:神をも恐れぬ生クリームのバベルよ!傲慢と怠惰を彷彿とさせる背徳の白き巨塔よ!!
レン:貴様が散りばめたこの虚飾の限り!絢爛にして豪華なる果肉とソース……女を惑わす富と虚栄のつもりか!
レン:だが最も罪深きはこの蠱惑的な琥珀!神々を退廃へと導く抗い難き情動……くっ、甘美なる破滅を禁じ得ない……
レン:そう、淑女ぶった貴様が1番質が悪い……決して出会ってはならなかった、亜麻色の乙女にはなっ!
レン:やつは溶けたバターと絡まり合い実にけしからん具合に……その秘蜜を、けしからん具合に……
レン:くっ、官能を禁じ得ないっ!教育者としてもはや見逃す訳にはもしゃ、もしゃ、もしゃ……
レン:もぐもぐもぐ……くぅっ、悪魔的美味めっ何たる冒涜、何たる冒涜……
???:ふふ、何をしているのかと思ったらまさか蓮にこんな秘密があったとはね
レン:なっ、貴様、不動クロム!?いつからここに……
クロム:おお、待ちわびたぞ!のところからですかね
レン:一番最初から、だと……
クロム:教師と言っても、やはりキミも僕達と同じ18歳ですもんね
レン:ご、誤解をするなよ、クロムいいか、落ち着いて聞け
レン:叡智を極めた貴様ならば理解できるだろう? ああ、そうだこれは糖分を補給しているだけだ!
レン:深く長時間の思考には脳を機能させるグルコースが必要不可欠で──
クロム:しかし、桃君やスピカ君ならまだしもよもや夏目蓮が甘い物好きとは……ふふ、みんな驚きますね、きっと……
レン:貴様っ、言いふらす気か!?
クロム:あれ、ダメなんですか? どうして?何か問題でもあるんですか? ふふ……
レン:くっ、そんなことをされては俺の、教師としての威厳が……
クロム:なるほど、一理ありますね
クロム:だったら蓮、僕と契約しましょう
レン:なっ、契約だと!?冗談じゃない、貴様と契約などして何をされるかわかったものではない!
クロム:あれ? いいんですか?だったら僕は、この秘密を皆に啓蒙して回るだけだけど……
レン:わかった、わかった!何を契約すればいいんだ、早く言え!
クロム:ふふふ、それはね……
-:クロムは人を食ったような笑顔と淫靡なまばたきをしながら、夏目蓮を試すように見つめる。
-:その悪魔的な値踏みに耐えかねて蓮が席を立った、まさにその時──。
クロム:うん、それと同じものを僕にもおごってください
レン:な……
クロム:足りないんですか? だったらもう1つ今後もこんな密会を催すつもりなら僕も必ず誘うことですね
クロム:どうかな、夏目蓮僕と秘密を共有してみる気はありませんか?
レン:貴様……
レン:くっ、勝手にしろ!おい、店員! 同じものをもう1皿!俺のテーブルに追加注文だ!
クロム:ふふふ、キミのおかげで週末の楽しみが1つ増えそうです
レン:フン、我ながら呆れる……高くつきそうな契約をしたものだ!
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-:とある集落で、夏目蓮が思索に耽りながら散策しているとふと、少女の泣き声が聞こえてきた。
???:ううう、しくしくしく……
レン:まったく、考えごともできないのかこの迷惑な泣き虫はどこだ
アンズ:ううう、お手々痛いよぅもうやりたくないよぅ……
レン:何だ、あそこの鉄棒の前で少女が泣いているな……
レン:おい、貴様、何を泣いている
アンズ:ひぃ、誰ですか、あなたは!?
レン:フン、知らない人とは話すなとでも学校で習ったか
レン:ならば教えてやろう俺は夏目蓮、ガイアスで教師だ
アンズ:え、ガイアスって、救世主の?それに教師って本当ですか?
レン:実にくだらん、愚問だな貴様に嘘などついて何の得がある
-:少女はやや躊躇した後覚悟の表情で頭を垂れた。
アンズ:先生、お願いしますあんずに逆上がりを教えてください!
アンズ:体育で逆上がりのテストがあって私だけできないんです
レン:フン、最初からそう言えばいいのだ
レン:さっきの無様な失態を見る限り貴様の逆上がりには重大な欠陥がある
アンズ:その欠陥、是非教えてください!
レン:状況は把握した原因も判明、対策もみえている
レン:貴様の肉体を元に完璧な物理計算で運動エネルギーの効率的な伝達法を今、確立したところだ
レン:さあ、俺の言う通りにやってみろ!
アンズ:えっと……よくわかりませんけどはい、わかりました、先生!
-:しかし、あんずの逆上がりは実に弱々しく、蹴り脚にも力のない大失敗だった。
-:それを見ていた蓮は、何かを感じ取って深い溜息を吐くと静かにあんずに背を向けた。
アンズ:ちょ、ちょっと先生!何で行っちゃうんですか?
レン:端からやる気のない生徒に構う教師などいない
アンズ:やる気ならあります!私、頑張ってるじゃないですか!
レン:どこがだ! さっきから見ていれば失敗を恐れてばかりではないか!
レン:恐れるな、恐れるべきは挑戦から逃げる弱い心だ
レン:臆病者に成長はないそんな者に教える気などない!
-:そう言って、蓮は去っていく。その背中を見つめながらあんずはぼそりと呟いた
アンズ:何よ、嫌なやつ……そんなに言うなら最後まで教えて行きなさいよ、もう!
アンズ:……はぁ、でも、悔しいけど言ってることは正しい気がする
-:そう言って、鉄棒を握り直した時ふと何かが足下に落ちていることにあんずは気づく。
-:それは1枚の[item:202102051(ペーパーリーフ)]だった。
-:そこに書いてあることを読むとあんずのうつむいた顔がゆっくりと上がっていった。
アンズ:もう1度だけ、頑張ってみようかな
chattalk_32020402
タヌヒコ:蓮、お疲れぃ
レン:フン、別に疲れてなどいないがな
レン:202102491
タヌヒコ:おお、それは飲むとシュワシュワする爽快な[item:202101771(天然水)]じゃねえか
タヌヒコ:あんずに渡すんでぃ?
レン:フンッ!すぐに向かう、待っていろ
タヌヒコ:おうよ
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アンズ:ああ、もう! くやしいいいい!
アンズ:でも、あそこまで言われたら意地でも成功しなきゃ気が済まない!
アンズ:もう、見てなさいよ!
-:何度目の挑戦になるのだろうか。もう、彼女は手の痛みに文句をたれることもなく、一心不乱に地面を蹴る。
-:蓮への苛立ちに紛れてしまって、いつの間にか集中していることに彼女自身が気づいていなかった。
-:その純度の高い集中力はついに奇跡を起こす──。
アンズ:それ、えいやーーーー!
アンズ:うそ!? できちゃった!?
レン:フン、まだやっていたのか
アンズ:なっ、あんたこそ!何でまだいんのよ!
レン:そんなものは俺の勝手だ
アンズ:べーっだ、相変わらずイヤミなやつ
アンズ:ってか、これ!あんたがくれたんでしょ!
-:そう言ってあんずが差し出したのは拾った[item:202102051(ペーパーリーフ)]だった。
-:それには、あんずが逆上がりできるようになるために克服すべき欠点がつらつらと書き連ねてあった。
レン:フン、何のことだか俺はそんなものは知らん
アンズ:え……
レン:そんなことより飲め
-:そう言って蓮は採ってきたシュワシュワ清水をあんずに差し出した。
アンズ:私に? 何で?
レン:頑張った者だけが口にする権利があるそれが、勝利の美酒ならぬ勝利のシュワシュワ清水だ
アンズ:えーっと、これって……頑張ったから、ご褒美ってこと?
レン:さあ、祝杯だ乾杯しようではないか
アンズ:ふふ、なんかよくわかんないけどあんたって実は……いいやつ?
レン:フン、くだらん
talk_32020501
-:夏目蓮は、とある村で教師を依頼されたが、ラクーンの教育がどうにも上手くいかなかった。
-:普段ならば、機転を利かせて問題を即座に解決する蓮であったが、今回ばかりは厚い壁に当たっていた。
-:それを週末の甘い密会で不動クロムに打ち明ける──。
レン:くっ、何故なのだ!
レン:何故たぬきどもは俺の授業を理解できない!もしゃ、もしゃ、もしゃ……
レン:地球では基礎中の基礎だぞ?今時中学生でもできる簡単な内容だ
レン:それなのに、何故……もしゃ、もしゃ、もしゃ
クロム:蓮、もう少し落ち着いたらどうですか?
クロム:そんな食べ方をしてはせっかくのミルクレープがもったいないですよ
クロム:それに……それはキミが天才だからではありませんか?
レン:貴様、皮肉なら黙らせるぞ
クロム:得てして、才能のある者は才能のない者を理解できません
レン:俺が、生徒達のことを理解していないとでも言いたいのか
クロム:ふふ、怒りましたか?僕はただ一般論を口にしたまでですが怒るってことは思い当たる節が……
レン:くっ、気に食わんやつだ
レン:ああ、認めよう理解不足は否めない
レン:まだまだラクーンの文化や心理に未知の部分が隠されていて俺はそれを把握しきれていない
レン:やはり、それが問題か……
クロム:うーん、どうでしょうそういう問題ではないと思いますけど
レン:だったら何が問題だと言うのだ!言ってみろ、クロム!
クロム:ふふ、前から思っていたことですがキミには不思議なことが2つあります
レン:……何だと?
クロム:1つは、僕達の時もそうでしたがどんなポンコツの生徒であってもキミは決して見捨てないこと
クロム:さんざん貶し、文句も言いますがそれを理由に投げ出したところを僕は見たことがありません
レン:フン、教師の責務だ誰でもやる、当然のことだろう
クロム:2つめは、1つめのその先にあるキミは何故か、無能に可能性を見出している節がありますね?
クロム:賢く有能な生徒だけを教えた方がキミの目的には有効なはず……なのに、キミは頑なに苦難の道を歩む
レン:何が言いたい、不動クロムまどろっこしい真似はよせ
クロム:そこから導き出される結論は1つそれこそ、キミの今の迷いの原因そのものだとも言えます……
クロム:ふふ、全てはキミが
クロム:生まれついての天才ではないからじゃないですか?
レン:クク、ククク……
レン:何かと思えば貴様さっきと言っていることが矛盾しているではないか!
クロム:いいえ、矛盾してはいないと思いますキミは天才であり、天才ではないそういう逆説的な存在
レン:意味がわからんぞ
クロム:だったらわかるようにこう言い換えましょうか
クロム:僕は知っている、キミの秘密を、ね
レン:フン、いい加減なことを言ってカマをかけようとしても無駄だ
クロム:ふふ、キミは紛れもなく天才ですが元から天才だった訳ではありません
クロム:そこへ至る過程で、凡人ではきっと想像も出来ない努力と忍耐を積み重ねて来たんでしょう
クロム:だからこそ、キミは決して向上心のある無能を見捨てない
レン:…………
クロム:見捨てられる訳がないですよね?だってそこにはかつての己の姿が──
レン:知ったような口を叩くな!!
クロム:さて、どうしてキミは今天才のふりをしているのでしょうか?
レン:黙れ!それ以上言えば、俺は貴様を……
クロム:ふふ、すみません少しおしゃべりが過ぎたようです
クロム:キミがおごってくれたこの甘く切ないミルクレープで塞いでおきますね、もぐもぐ……
レン:…………