talk_32040101
クロム:僕の名前は……不動クロム高校2年生で科学部所属の……錬金術師……
クロム:賢者の石を錬成し、アカシャの扉を開いた今……
クロム:この世の全ての出来事は……退屈極まりない……そう……今のこの状況ですら……
???:……クロム起きているんだろう
クロム:……おはよう蓮先生
レン:狸寝入りも甚だしいそれよりも、今後のことだ貴様の意見を聞きたい
クロム:おや? ふふふいつになく弱気だね、先生
レン:なに?
クロム:僕に頼るのかい?ふふふ、キミが本当に望むなら……答えを授けてもいいんだけれどね
レン:誰が答えを言えと言った気に食わない奴だな、貴様は
クロム:誉め言葉として受け取っておこうかな
レン:チッ……つくづく貴様は……もういい
レン:自力で現状を打開する。貴様はせいぜい見ているといい
クロム:拗ねないでよ、先生
レン:拗ねてなどいないっ!!いちいち癇に障るな貴様!
クロム:ふふふ……それが僕ささて、それじゃあ行くとしようか
レン:何処に行くつもりだ?
クロム:先生の頭の回転をより早くしてあげようと思ってねカカオを集めてこようかと
レン:はっ、いらぬ心配だなだが……ひとまずは貴様の好意を受け取っておこう
レン:だが、当てはあるのか?そう都合よく自生しているはずが……
レン:いや、愚問か貴様が言うのだきっとあるのだろう
クロム:あは、過大評価だよでも、そこまで信頼されてると照れちゃうなぁ……
レン:チッ、思ってもないことを……もういい、さっさと行くぞ
クロム:そうだね、行こうか真理の扉を開きに、ね
chattalk_32040102
タヌヒコ:ちょっと、クロム?
クロム:何でしょう
クロム:ああ、そうでした、これですね
クロム:202102071
タヌヒコ:…?
タヌヒコ:確か、カカオナッツを採取したと聞いてたんだが
タヌヒコ:それなのになんで[item:202102071(チョコレート)]があるんでい?
クロム:錬成したのですよ
タヌヒコ:錬成? 魔法みたいなものか?
クロム:両者は全く異なるものですが
クロム:キミが理解しやすいのであればそれで別に問題はありません
タヌヒコ:問題大ありだぜい!
タヌヒコ:この星のものを勝手に変なものに変えないでくれよぉ!
クロム:そうですか、ふふ、そうですよね
talk_32040103
-:夏目蓮と不動クロムは焚き火のところまで戻って来てチョコレートを食べていた
レン:つくづく、食えないやつだ
クロム:食べているではないですか僕のチョコレート
レン:フン、くだらん
クロム:ともあれ、僕は言われたとおりきっちり仕事をしましたよ
クロム:ここから先は蓮の仕事ですそのチョコで頭をフル回転させてせいぜいアイデアを出してください
-:そう言って、クロムはまた身体を倒して横になる
-:悪戯な笑みをたたえたまま瞳を閉じて深い眠りにつくのだった
レン:おい、クロム! 寝るんじゃない!
クロム:…………ぐぅ、すやすやすやー
レン:チッ、何が錬金術師だその実、ただの詐欺師ではないか
レン:俺は貴様になど騙されんぞ
レン:ん? 何だコレは……
-:蓮はふと、クロムのバッグの中からチョコレートの包装紙がこぼれているのを見つける
-:それは1枚ではなく、何枚もありどう見てもついさっき剥いたばかりのものだと即座に理解できた
レン:こいつ、自前のチョコをただ剥いて渡しただけか?
レン:ククク、そら見たことかやはり貴様はただの詐欺師だ
レン:……いや、待てよ
レン:こんな貴重なもの、普通は自分独りで食べてしまっても……
レン:くっ、こいつ!?わざわざ俺に食わせるために
クロム:…………ぐぅぅぅぅ
レン:フン、食えないやつめ
レン:ククク、だが面白いいつまで狸寝入りを決め込むつもりか見物だな……
クロム:…………
-:錬金術師の不動クロム──嘘か真か食えない男。
-:しかし、彼の悪戯の裏側に確かな優しさを見た気がして夏目蓮はほくそ笑んだ──
talk_32040201
ケイノスケ:ちょっと、あんた!錬金術師のガイアスだろう?
クロム:おや、もしかして僕のことを言っているのですか圭之助くん
ケイノスケ:あれ、何で俺の名前知ってんだ……って、んなことより薬だ!俺に薬を作って欲しいんだ!
クロム:ああ、それでしたらはい、出来ていますよ
ケイノスケ:え……
ケイノスケ:いやいやいや俺まだ何も言ってないんすけど?
クロム:言わなくてもわかりますよ僕は万象の叡智を識った極限の錬金術師ですからね、ふふふ
ケイノスケ:……いや、何言ってんだかさっぱりわかんねぇんすけど
ケイノスケ:まいっか、恩に着るぜ、錬金術師!へへへ、ほんじゃ早速一服させてもらって……ごくりんちょ
ケイノスケ:────!?
ケイノスケ:ふぎゃああああっ!なんじゃこりゃあ!
クロム:ふふふ……どうです、完璧でしょう?
ケイノスケ:全然違ぁぁぁぁう!
クロム:あれ? 違いましたか?見えなくなるほどに小さくなりたいのかと、てっきり
ケイノスケ:違うよ! 俺が望んでることちっともわかってねぇじゃねぇか!
ケイノスケ:戻しやがれ!ふざけてんじゃねえぞ!
クロム:言葉が汚いですねぇ……さあ、これで元に戻りますよ
ケイノスケ:ぱくっ……ごくりんちょ
ケイノスケ:はぁはぁはぁ……て、てンめぇ、俺で遊びやがって……
クロム:ふふ、楽しかったでしょう?
ケイノスケ:楽しいわけねぇだろがああああ!
クロム:はい、これ
ケイノスケ:ったく、今度は本物だろうな?ぱくっ、って甘ぇえええ!飴みてぇだ!
クロム:はい、飴ですね
ケイノスケ:むきぃぃぃぃっ!おちょくってんじゃねええええっ!
クロム:ふふ、すみませんそろそろ真面目にね
クロム:うん、少し待ってもらえますかキミが望む薬を作ってきますから
ケイノスケ:はぁ、ひでぇ目にあったぜ……
ケイノスケ:へへへ、だが俺様の正体にゃ気づいてねぇみたいだったな……
chattalk_32040202
タヌヒコ:お疲れぃ
クロム:ああ、お疲れ様です
タヌヒコ:薬を作ってあげるようだな
タヌヒコ:何の薬か聞いてもいいか?
クロム:うーん
タヌヒコ:35
クロム:内緒
タヌヒコ:41
タヌヒコ:おいおい、ちゃんと説明してくれよ
タヌヒコ:最近、この辺りで変な薬を使った事件が多いんでい
クロム:変な薬を使った事件?
クロム:それは興味がありますね
クロム:今から聞きに行ってもいいですか
タヌヒコ:別に構わないけどよ
talk_32040203
クロム:さあ、待たせたねキミが望むものを作ってきましたよ
ケイノスケ:今度は本物なんだろうな……
クロム:ええ、今度こそ間違いなくキミが望んだ薬です
ケイノスケ:よし、飲んでやろうじゃねえか!
クロム:待って、その前に契約を致しましょう
ケイノスケ:ああン、契約だぁ?
クロム:とは言え、難しいものではありませんただ、決して後悔しないと一言約束してくれればいいのです
ケイノスケ:ああ、そんなことかよへっ、後悔なんざするもんかってんだええい、飲んじまえ!
ケイノスケ:ごくりんちょ……
クロム:さて、いかがです? 気分のほどは
ケイノスケ:えーっと、何ともねぇ……ていうか、効果ねえじゃねぇか!
クロム:ふふふ、そんなことないですよそろそろ効いてくる頃合いかと
クロム:さて、キミの正体は何ですか?
ケイノスケ:おうよ、俺様は天下の大泥棒──って違っ! いや、違くない!何だこりゃ、どうなってんだぁ!?
クロム:ふふふ、ほらね僕の薬は完璧ですので
ケイノスケ:てンめぇ、何を飲ませやがった!?
クロム:その薬は、2度と嘘がつけなくなって正直者に生まれ変わる薬なのです
ケイノスケ:俺が欲しかったのはそんなんじゃねえ
クロム:それでは、何が欲しかったのかお聞かせ願いましょう
ケイノスケ:そ、そいつぁ……透明人間になる薬で──って嘘だぁ!信じるな、嘘だぞ嘘!
クロム:何のために姿を消したかったのです?
ケイノスケ:ぬ、盗みをもっと効率良く──
ケイノスケ:じゃなくてだなぁ、えへへへ全人類の世界平和のためにですね……
ケイノスケ:げへへ、女湯ものぞき放題だしぃ?タクシーも乗り放題でぇ──
ケイノスケ:ってええええ、違っ、全然違あう!恵まれない子ども達のためにだなぁ透明になりかっ……か、かかかかか
ケイノスケ:勘弁してつかあさああああい!悪いこといっぱいしたかったんですぅ
クロム:ふふ、やっと本当のことを話してくれましたね、圭之助くん
ケイノスケ:て、てンめぇ……ただじゃおかねぇかんなっ!
ケイノスケ:てっ、あれ……体が……痺れて……動か……ない……
クロム:ああ、言い忘れていました副作用で身体が麻痺するのでした
クロム:じきにキミを捕まえるために自警団が来ることでしょう
クロム:楽しかったですよ、大泥棒の圭之助くんいい実験データもとれましたし僕はこの辺でお暇しましょう
ケイノスケ:ひ、ま、待て……置いてか……ないで、くれぇ……
-:こうして世間を騒がせていた大泥棒圭之助が逮捕された。
-:しかし、その1番の立役者が/rubyn誰も知ることはなかった──
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レン:おい、クロム
クロム:何でしょう、蓮
レン:常々疑問に思っていたことがある
レン:貴様、何故そんなにも退屈そうにする
クロム:ふふ、おかしなことを僕はいつも楽しんでいますが
レン:ああ、他人をからかいおちょくる時はな
レン:だが、俺の目を欺けると思うなよそんな上っ面のことを言っているのではない!
クロム:うーん、参りましたねキミの前では嘘は逆効果ですか
レン:フン、当然だ
クロム:でも真実は話せませんだからこれはただの例え話です
クロム:数年前、自室で水を飲んでいましたペットボトルに入ったただのミネラルウォーターをね
クロム:全て飲み干しましたがまだ乾きが癒えません
クロム:だから僕は新しい水を飲もうと台所の冷蔵庫の扉に手をかけました
クロム:ゆっくりと開くと、そこには──
クロム:水の代わりに真理があったのです
クロム:僕が開いたのは冷蔵庫の扉などではなく真理の扉だったのですよ
レン:……意味がわからん
クロム:ふふ、理解しようとしてはいけませんだってこれは、ただの例え話ですから
レン:だが、意味はあるのだろう?貴様なりの解答としての意味が
クロム:うーん、どうでしょう正直、自分でもよくわかりません
レン:肝心なことは話さない貴様はいつもそうだな
クロム:ふふふ、その話には続きがありましてね
クロム:その日以来、僕の周りでは不思議なことばかりが起こるのです
クロム:少し硝子瓶を温めてみたらフラスコの中の小人……儚き命が誕生しました
レン:バカな、それは……人工生命体か!?
クロム:次の日、更に温め続けると澄んだ赤い液体になりましてね
クロム:それをさらに煮詰めると小さな石が出来ていましたよ
クロム:振ると小気味よくカラカラ鳴ってこれが実に良い音を奏でるのです
レン:……伝説の霊薬に、賢者の石だと
クロム:それでようやく気がついたのです
クロム:嗚呼、僕はあの時冷蔵庫と間違えてアカシャの扉を開けてしまったのだ、とね……
レン:…………
クロム:賢明な蓮のことですもうこれ以上の言葉は不要でしょう
レン:フン、とどのつまりこういうことか扉を開けて全てを知った貴様にはもう何も興味を引くものはない、と
レン:だから、世界は退屈だとそう言いたいのだな?
クロム:ふふふ
レン:フン、実にくだらん
レン:貴様は、大きな勘違いをしている
クロム:勘違い?
レン:貴様が手に入れた真理とやらは所詮、冷蔵庫に入っている程度のもの
レン:ならば今度は、もっと大きな扉を開けてみたいとは思わないのか
クロム:例えば、どんな扉ですか?
レン:……校門とか
クロム:……え?
レン:いや、もっとだ!寺社仏閣の飾り門とか!
クロム:…………
レン:そうだ、種子島のロケット組立て棟の世界1大きな扉とかどうだ?あれは開き甲斐があるぞ!
クロム:ふ、ふふふふ……
レン:何だ? 何がおかしい!
クロム:ふふふふ、ちょっと待ってください蓮って冗談が言えたのですか?
レン:冗談など言っていない!俺は至って本気だ!
クロム:ふふふ、うん、わかりました大丈夫、ふふ、言いたいことはふふ、理解していますから、ふふふ
レン:くっ、笑うんじゃない!
クロム:ふふ、確かに、蓮といればひとまずは退屈しなさそうですね
レン:だから笑うなと言っているだろう!
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アキ:クロムさん! 錬金術師さん!どうかお願いします!暁の話を聞いて下さい!
クロム:はい、お断りしておきましょう
アキ:そんな! まだお願いすら言ってないのに!
クロム:聞かなくてもわかるのです言い当てて見せましょうか?
アキ:えー、そんなの無理に決まって──
クロム:僕の弟子にして欲しい
アキ:────っ!?
クロム:違いましたか、暁君
アキ:いえ! そ、そうです!どうしてわかったんですか?
クロム:真理を理解していますので──と言いたいところですが、違います
クロム:キミのような人には飽きるほど会ってきましたから見れば察しがつくのです
クロム:僕の周りに集まってくるのは欲に駆られ、智識を悪用したいと願う人達ばかりですから、ふふふ
アキ:わ、私は違います!悪用なんかしません!
アキ:ただ、私は……
クロム:でしたら1つ試してあげましょう今から僕と薬を作るのですそれができたら弟子にしてあげます
アキ:本当ですか!ありがとうございます!
クロム:では、契約ですね
アキ:え、契約……?
クロム:と言っても難しいものではありません
クロム:ただ、決して後悔しないと一言約束してくれればよいのです
アキ:……う、うん、約束するよ
クロム:では、材料は僕が集めて来ましょうキミはここで錬成しやすいように環境を整えておいて欲しい
クロム:鍋を用意し、火を起こし湯を沸かして欲しいのですが
アキ:はい! 師匠!お任せください!
クロム:ふふふ、悪くない響きです
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タヌヒコ:クロム、聞いたぜい
タヌヒコ:弟子をとったようだな
クロム:ふふ、少し気が早いですよ
クロム:まだ試用期間ですから
タヌヒコ:そうか
タヌヒコ:錬金術師の道は険しいんだな!
クロム:23
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クロム:さぁ、ゆっくりかき回してごらん
アキ:は、はい! こうですか?
クロム:いいね、キミ、筋がいいですよ
アキ:ありがとうございます!
アキ:あの、でも師匠……1つ気になることがあるんですけど
クロム:なんだい、言ってごらん
アキ:これって、野菜スープなのでは?
クロム:ふふ、そう思うのでしたらちょっと飲んでみますか?
アキ:えーと、野菜スープに見えるけど実は、錬金術で錬成した奇跡の秘薬なんだよね!
アキ:いっただきまーす!ごくっ……んんっ!?
アキ:美味しい……完璧な野菜スープだ!
アキ:って、やっぱりただの野菜スープじゃないですか!
クロム:そうですね、野菜スープですね
アキ:し、師匠~~~~!ちゃんと教えてくださいよ~!
アキ:私の……病に伏せた母にはもう、時間がないんです……
アキ:私が……ひぐっ……うぇ、薬を作らないと……
クロム:ならば、もう解決したではないですか
アキ:えっ?
クロム:このスープを持ち帰って飲ませてあげるとすぐに治ります
アキ:ええっ、本当ですか!?これがお薬になるんですか!?
クロム:この野菜スープの中にはね僕があらかじめ生命力を高める秘薬を溶かしておきましたので
アキ:本当ですか!?
クロム:ふふ、師匠がそう言っているのです弟子が信じないでどうするのです
アキ:あ、ありがとうございます……!このお礼は、いつか必ず……!
クロム:お礼なんていりませんそれよりも1つ教えて欲しいことがあります
アキ:え、今……教えて欲しいって?でも、師匠って、確か何でも知っているはずでは……?
クロム:なぜキミは、僕に特効薬を作るように願わず、わざわざ自分が錬金術師になるなんて面倒な真似をしたのです?
クロム:人間なんて誰でも楽がしたい自分だけが幸せならそれでいいそんな風に考えるものでしょう?
クロム:キミは考えなかったのですか?
アキ:それは……
-:クロムの言葉が優しくも鋭く突き刺さる。
-:言葉の1つ1つを、少年は真っ向から受け止めながら勇気を振り絞った。
アキ:奇跡には、代償が必要だと思ったからです
クロム:代償?
アキ:師匠だって、錬金術を体得するのに尋常じゃない努力をしてきたはず
アキ:私の母の不治の病を治すっていう奇跡だって、相応の苦労がないとそれは嘘になっちゃいそうで……
アキ:そう思ったからです……間違っていますか? 師匠?
クロム:ふふ、これは驚きました……まだ何も教えていないと言うのに暁は錬金術の基本を知っている
クロム:これは紛れもなく等価交換──錬金術第1原則です
アキ:す、すみません、偉そうに!忘れてください
クロム:暁君、その薬でお母さんを治したらいつか僕のところに来るといい
アキ:え、師匠、それってまさか私を……本当に弟子に……
クロム:ふふ、さあどうでしょうねでも僕は気まぐれですからそう長くは待てませんよ
アキ:ありがとうございます! 師匠!
クロム:僕にだって見えないものはあります
クロム:万物を見通せるようになったからこそ見えなくなってしまったものがね……
クロム:僕はいつ、暁のような輝く明日を見失ったのでしょうか
クロム:ふふ、それすら思い出せないのです
talk_32040501
-:不動クロム、夏目蓮の2人は、冒険の役に立つ新薬の開発に共同で取り組んでいた。
レン:よし、次は……硝酸を少し加えるか
クロム:流石、いい判断ですそれなら間違いなく成功しますよ
レン:フン、空々しいやつだ貴様が実験を主導しているんだ失敗などありえるはずがない
クロム:ふふ、それは保証しましょう
クロム:でも、実はそこはこうやった方が断然面白いです
レン:お、おい!貴様何をする!?
クロム:まずはアンフェタミンを小さじ1そう、アレも大さじ3くらい……
クロム:こうして、あとは強火で煮込めば……
レン:くっ、クロム、この臭い……
クロム:おや? 何だか焦げ臭いですね
クロム:────!?
レン:まずい、伏せろっ!
レン:ゴホッ、ゴホッ……貴様ぁ……!今までの苦労が水の泡だ!
レン:まさか、これが狙いか!貴様、またくだらん悪戯を──
-:しかし、様子がおかしい。クロムは愕然と1点を見つめながらふるふると小刻みに震えていた。
クロム:…………
レン:おい、何とか言ったらどうだ
クロム:ふふ、ふふふ……あははははっ! おかしい!ありえない、ありえないですよ!
レン:……大丈夫か、クロム?貴様、まさか初めての失敗で気が動転して……
クロム:蓮、つまらない軽口で僕の愉悦に水を差さないでください
レン:な、何だと
クロム:ふふ、どうして爆発したのでしょうそんな要素は微塵もなかったはずでは、どんな化学反応を起こした?
クロム:嗚呼、何て素晴らしい!予想だにしていなかった結末です!僕には見えなかった未来です!
クロム:この高揚感、多幸感!何時以来でしょう!失敗、そう、これは大失敗です!
クロム:よし、原因究明といきましょうこの星だと異なる化学反応が……?いや、原料が異質なのかも知れない
クロム:ふふ、やはり異世界は楽しいです地球とはまるで違う知識が埋もれているのです。だから……
レン:……異常な男だこれほど失敗を喜ぶとはな……
レン:ククク、だが、こいつもこういう顔をするのだな……
レン:フン、初めて見たが無邪気でいい笑顔じゃないか
レン:よし、では原料となる鉱物の採取からやり直すか
クロム:はい、次こそは精製で不純物を100%取り除いてみせますよ
レン:今夜は寝かさんぞ、クロム
クロム:ふふ、望むところです、蓮
-:今まで見せたことのない子どものようなクロムの笑顔を見て蓮もまた楽しげに応じるのだった。